PSR死すともSaaSは死せず
コッカラSaaSの筆者は株式投資がクソ下手である。どのくらい下手かというと、昨年あれだけAI特需であったにも関わらず全体でマイナスに転じたほどだ。
株式投資の難しさはタイミングにある。どれだけ全体傾向の反転を予想できても、タイミングが合わなければ売り買いの商機を逸するので儲からない。本ニュースレターは今から遡ること2年2ヶ月、「SaaSがオワコンした2023年」と題して以下のように述べた。
生成的AIはSaaS業界をこの一年で大きく変えた。今年4月のニュースレターでは「SaaSに成れた時代からSaaSに慣れた時代」への変遷をAtlassianとSplunkを例に分析したが、ひょっとしたら2024年はSaaSが枯れる時代かもしれない。これはSaaS業界そのものが消えるという意味ではない。しかし生成AIがいとも簡単にCRUDなウェブアプリ生成を代行し、ハードウェアも一般的SaaS要件を上回るスピードで進化している今、「ソフトウェアをオンラインサービスとして提供する」業態そのもののハードルは、ほぼ無くなったと言ってよい。少なくとも過去10年のように、ベンチャーキャピタルのリスクマネーを調達してウェブサービスを作り込む時代は、もう二度とやってこない。サラリーマンが副業の一環でSaaSを作るような流れが、今後より一般化すると考えるのが自然だ。
まったくもってこの予想のとおりになっているわけだが、その決定打となる「一般的なエンジニアより余裕で賢いAIの登場」に関しては、2025年まで待つ必要があった。文字通り誰でもSaaSのプロトタイプを作れるようになった今、ようやく投資家諸兄の間でSaaS複製技術時代の芸風が固まりつつある。
芸風は当たり前だが死ぬ派と死なない派にわかれる。死ぬ派のロジックはカンタンで「いやだってClaude Codeに〇〇というSaaSをコピーして。私のログイン情報はcredentials.txtに入ってるよ~で一発ですやん」である。死なない派ではSmartHR二代目社長である芹澤雅人氏が自社メディアで「AIでSaaSは死なないし、業務システムをAIで内製化してはいけない」と主張、日本最大規模未上場SaaSの経営者ならではのポジショントークを薄すぎるオブラートで包んで話題となった。
SaaSの非差別化要因2.5選
芹沢氏は①保守・運用コストの肩代わり②べストプラクティスの集約による品質保証③セキュリティ・コンプライアンス対応の代行の三つを業務システムSaaSの最大提供価値と位置づけている。結論から述べると実は①の価値はほとんどなく、②の価値複製は多くの領域において容易であり、もっとも置き換えが難しいのが③だと当ニュースレターは考える。