Manusの果実とSouthern Chinese All Stars
中国特色的AIエージェントを提供する一応シンガポール籍スタートアップManusがMeta社に買収された。ファーストコンタクトから最終契約書締結まで10日間と言われており、監査法人のショートレビューよりも短いスピード感だ。Move Fast Break ThingsだったFacebookが、いつの間にかMove Fast Close DealsなMetaに進化していた。月初にLimitlessを買収したばかりで、Meta社財務の師走は多忙を極めたに違いない。
Manus自体が今年3月にリリースされ、4月末に米国Tier 1ベンチャーキャピタルのBenchmarkから評価額$500Mで$75M調達したばかりだが、12月にはサービスインからわずか8ヶ月でARR$100M達成を公表、史上もっとも速く成長したソフトウェア企業のひとつとして話題になっていた。買収額に関しては後々触れるが、各社報道によれば中国国内の投資家持ち分はすべて買い取り、サービスはMeta社内での活用も見据えながら継続、創業者CEOである肖弘氏は、COOであるJavier Olivanに直レポとのこと。しかしながらAI関連買収ということで、過去9ヶ月間、ビリオネアの仲間入りした以外には、チューリング賞受賞者を社内政争の末追い出したくらいしか目立った業績がないAlexandr Wang氏が発表する運びとなった。
The Manus team in Singapore are world class at exploring the capability overhang of today’s models to scaffold powerful agents.
Looking forward to working with you, @Red_Xiao_!
Manusの差別化要因はというと、「言われたことをちゃんと最後までやり切る」エージェントであるということだ。先ほど中国特色的と書いたが、東アジアペーパーテスト偏重ガリ勉特色的と表現してもよいだろう。他のエージェントが口ごたえしたり、最後まで言われたことをやりきらなかったりする中、ユーザー側のAIリテラシーが低くプロンプトがスカスカでも黙って仕事を完成させる秀才さが売りである。自社モデルは保有しておらず、裏側では複数のモデルを組み合わせていると考えられており、トークン単価という意味だと安くはないが、出戻りが少なくタスクを任せられる安心感が強みとなっている。まさにIntelligence Market Fitの好例であろう。
しかし飛ぶ鳥を落とす勢いのManusはなぜここで買収されることを決断したのだろうか?
まず重箱の隅をつつくところから始めたい。ManusがいうARRというのは厳密にはARRではない。サービスインから一年経っていないので、YoYのチャーンが計測不可能だからだ。まだRecurringするだけの時間が経っていないので、より正確に述べるならば取り敢えず初年度のブッキングが$100Mを超えた、である。今年積み上がった$100M強の売上のうち、どれだけが来年以降も残るのか増えるのか不明である。3月ローンチ、8月中旬にARR$90M達成、12月中旬にARR$100M達成という数字をもとに売上成長モデルをManusに計算させたところ、ホッケースティックの向きが逆に出てきてしまった。