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ブラウザの立ち位置を巡るチキンレース
らんぶる 2025.11.02
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OpenAI社の新しいブラウザChatGPT Atlasが発表されてから早二週間が経った。その名前からもわかるように、ChatGPTをデフォルト搭載したブラウザであり、今までChatGPTを単体で起動して行っていたメール本文のドラフト作成や清書といった作業がブラウザ単体で完結する他、いわゆるコンピュータ操作機能を活用したウェブページ上での操作の自動化が可能となっている。当然のごとく市場はGoogle Chromeとの来たる競争を想起、Alphabet株は一時急落した。しかしChatGPT AtlasがMacOS版しかまだ準備できていないこと、今やブラウザ市場はデスクトップよりモバイルの方が大きく、ましてや消費者市場で考えるならばよほど酔狂なユーザーでない限りSafariとChromeというデフォルト以外を選択するわけがないことが明らかになるや、Alphabetの株価は急回復を見せた。

OpenAIの目的はAI時代のGoogleになることなので、ブラウザというインターネットの玄関口の市場シェアをGoogle Chromeから奪おうとすることはきわめて自然な戦略と言える。成功するかわからないが、もし成功するのだとしたら、その先にあるインターネットは今とは全く違うエコシステムに変容しているに違いない。

この話の出発点として、OpenAIとAlphabetのビジネスモデルの違いにまず注目する。少なくとも2025年10月時点でOpenAIの広告収益はゼロであり、2025年上半期で稼ぎ出した$4.3B≒6,500億円はすべてサブスクとAPIで形成されている。一方Alphabetはというと、Google Cloudの売上貢献が増えつつあるものの、未だ売上の半分以上が検索・ディスプレイ広告であり、YouTubeやアドネットワークも含めると、売上の70%以上を広告収入が占めている。

売上構造の違いは当然プロダクトの作り方に反映されてくる。広告ではなくサブスクで売上を作ってきたOpenAIからすれば、Google Chromeは潜在顧客と自社サービスchatgpt.comの間に介在する障害でしかない。これまでOpenAIがiOSやMacOSのアプリを作り込んできたのも、顧客接点としてのChatGPTを重視しているからで、それは全くもって消費者ビジネスに興味がないAnthropicのデスクトップ・モバイルアプリの投げやりさとも対照的である(Claude Desktop正式ローンチおめでとうございます)。

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