Zendesk:バイキングたちの挑戦

Product Led Growth (PLG) は北欧神話か?
らんぶる 2022.02.21
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ロシアとウクライナの情勢が読めない中、今週も引き続き株式市場の荒れ模様は続そうだが、今日も元気にSaaS業界の生き証人としてデータを読み解いていきたい。

https://twitter.com/dfinvestment/status/1493607380558483469

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本日のテーマは顧客サポートツールの雄Zendeskである。使いやすい製品の無料おためしプランから有償化→拡販を狙ういわばproduct led growth (PLG)のお手本のような会社だ。2007年に創業、2014年に上場しており、すでに創業から上場までの期間より上場から今までの期間の方が長いベテランSaaS企業だ。

SaaS業界に関わる(日本在住の)人がZendeskについて知るメリットは二つあると考えている。

まず、Zendeskがシリコンバレーの内輪の会社ではなく、デンマークで起業してシリコンバレーに乗り込んでいった部外者だったこと。彼らは特段デンマーク出身であることは隠しているわけではないが、その部外者ならではの苦労話は意外と知られていない(少なくとも僕の周りのSaaS有識者でこのことを知っている人はいなかった)。僕自身、Zendeskのプロダクト自体は何年も使っていたにも関わらず、今回のリサーチの一環として手に取った創業CEOのSvane氏の自伝Startuplandを読むまでアメリカ発のサービスだと誤解していた。北欧の小国出身のミドサー男性3人が生活を切り詰めて作った地味なB2Bサービスが、シリコンバレーを代表するPLG型SaaS企業になるまでの軌跡は、日本のSaaS起業家と投資家にとって参考にもインスピレーションにもなるのではないかと思う。

もう一つの理由が、この数年ZendeskはSMBからエンタープライズに明確に舵を切っており、その努力と試行錯誤が、各種投資家向け資料から見てとれるからだ。全てのSaaS企業は、どこかのタイミングでエンタープライズを攻略する必要がある。そして、ほとんどの企業はZendeskよりもずっと早い段階でその意思決定を迫られる。PLGがうまく行きすぎたZendeskは、エンタープライズ戦略を組まずに上場「できちゃった」珍しい例であり、遅く始めたからこそ、その過程が開示情報という貴重なデータとして残っており、誰でも研究できるようになっている。

…というわけで、顧客サポートのSaaSといういぶし銀のドメインを起点に年間$1500億円のビジネスを立ち上げたバイキングたちの事業について順々に調べていく。

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続きは、4932文字あります。
  • コペンハーゲンのアパートからー成功の原体験とその功罪
  • 遅れた指標改変とこの一年間の巻き返し
  • これからの展望ーZenterpriseの鍵を握るのは創業CEO

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