Notionベアシナリオ
筆者は旧時代のおじさんということもあり、去年までNotionを真面目に使うことがなかった。Notionはローンチされたのが2016年なので、レイトマジョリティも良いところである。しかし遅れてきたからこそ、熱狂的信者の視点ではなく、割と中立的な視点でその使い勝手を評価することができた気がしている。
Emailのアンチテーゼとしての全て
Notionの課題を考えるうえで、Eメールについて先ず考える必要がある。Eメールがホワイトカラー同士のコミュニケーションにおける共通ツールとなって30年近く経つ。Eメールは非同期かつレイテンシの低いテキストのやりとりを汎用的に実現したが、ナレッジのサイロ化も促すことにもなった。仕事における進捗というのは往々にしてEメールのやりとりの中に、アジェンダの事前共有や会議後の議事録配信といったかたちで格納される。当たり前だがメールは受信した人間しか見ることができず、発信時にコミュニケーションに含まれていなかった人間は、含まれていた人間から共有されない限りその内容に触れることができない。
いわゆる生産系ツールの類いはすべてこの「ナレッジ管理の観点からみたEメールの不完全性」を解決する手段として整理することができる。SlackはIRCにヒントを得て、個人ではなくチャネルをコミュニケーションの中心に据えることで、コンテクストの共有を一段と楽にした。JIRAやAsanaに代表されるプロジェクト管理ツールも、情報共有プロセスの民主化が本質である。AsanaがEメールを仮想敵に据えたマーケティングを展開したのも、まさにこの「生産性ツールとしてのEメールの肥大化」が理由である。
Notionも情報共有プロセスを民主化するツールである。複数編集者によるコラボを念頭に置いた直感的インターフェース、様々な情報の可視化と構造化をサポートするブロックという概念、Slackを彷彿させるシームレスな複数ワークスペース管理機能、ドキュメントをウェブサイトとして公開できる点など、とにかく人間が人間とテキスト情報を共有するということに重きを置いてきた。
Blockがブロッカーに
しかしAIが台頭してきたことで、この前提が崩れつつある。