Box:手品師のサバイバルガイド③
本題に入る前に前回のニュースレターに関して読者から入ったツッコミに関してフォローアップしたい。

指摘された箇所を先週のニュースレターから引用する。
個人的にはこの買収は大正解だったとみている。まず内在的ロジックとして、そもそも契約書の最終的成果物は完全履行済み契約書であり、それは多くの場合PDFである。そしてそのPDFは堅牢にアクセス権限が管理されたかたちで保管される必要があり、少なくともBoxの10万社強の顧客にとっては、その保管場所がすでにBoxである確率は低くない。つまりBoxからしてみれば、どの顧客が既に契約書をBoxで保管しているかはメタデータを分析すればわかるはずで、既存顧客へのBox Signのアップセルは、高い確度をもって展開できると予想される。
まず筆者はBoxの社内情報を一切保有しておらず、上記のメタデータ分析に関する示唆は憶測の域を超えないものであったことを再度強調しておく。その上で「予想される」という表現が誤解を招いた可能性について真摯に謝罪したい。
その上でBox社のプライバシーポリシーを確認してみた。日本語版の該当箇所を以下引用する。

この中で私が「憶測」した利用パターンは「Boxサービスに関するトレンド、利用、行動を、販売、マーケティング、広告目的でモニターおよび分析するため」に該当する。つまりBoxの社内スタッフがアクセスできる範囲のデータをBox Sign含む製品群のクロスセルに使うことはプラポリの範疇とみて良いだろう。
問題は社内スタッフが、どこまで顧客保有コンテンツのメタデータにアクセスできるか、である。こちらについては同ページの「Boxが自動的に収集する情報」セクションから引用する。

使用情報の一覧にアップロード・ダウンロードされるファイル名が含まれているので、少なくとも私が当初憶測したタイプの分析はできてしまいそうである。しかしできることとやることは違うので、あくまで憶測であったという事実は繰り返し強調しておきたい。リサーチの浅さを露呈することとなってしまい、恐縮である。
ここから今週の本題となる。
最終回となる今回はBoxの業績をクローズアップして分析する。前回の結びの部分にも書いたが、Boxの業績は決して順風満帆とは言えない。しかし8年分の業績報告を読んだ今、確信を持って言えることは、経営陣は常にその数字と真摯に向き合ってきており、常に前向きに改善策を打ち出してきたということだ。
今回はその不断の努力の8年間に、各種KPIの分析という切り口でスポットライトを当てる。まずは前回軽く触れたRule of 40の数字をおさらいするところから始める。