シリコンバレーの(元)秘密結社Palantir(前編)

上場後の情報開示義務を経て見えてきたPalantirのビジネスとその展望
らんぶる 2022.01.10
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まだFacebookがアメリカの一部の大学でしか使えなかった2004年、Palantirは誕生した。その16年後の2020年に満を持して上場し、1年と少しが過ぎた。Palantirの成長は、僕自身のキャリアと時期を同じくしており、知り合いも何人か働いていたりしたので、なんだかんだずっと観察してしてきた企業のひとつだ。ということで、このニュースレターの第一弾はPalantirのGTMについて書こうと思う(GTMって何よという方はこちらを参考にされたし)。思ったより長くなりそうなので、前後編に分けて書く。

上場する前のPalantirは、正直何をやっている会社かよく知られていなかった。随分と長い間トップページに君臨していたのは、戦場を彷彿させるこんなムービーである(一時期、ソフトウェア業界ではトップページにアニメーションを持ってくるのが流行っていた)。

https://web.archive.org/web/20160309042836/http://www.palantir.com/
https://web.archive.org/web/20160309042836/http://www.palantir.com/

“Products Built For A Purpose” ってなんのこっちゃい、元祖パーパス駆動企業かよという感じである。ただなんか凄そうだし、なんかかっこいい。多くの人の印象は、そんなものだった。また、2010年代中盤、BuzzfeedのWill AldenがこれでもかというくらいPalantirを調べ上げてAlden砲をぶちまけていたので、その社名を知っている少数派にとっては、極めてネガティブな印象だったと記憶している。唯一好感度が高かったのは、Palantirが採用活動に精を出していた米国エリート大学のコンピュータサイエンス学科の生徒くらいだったんじゃないだろうか。

かっこいいけどちょっと怪しくて不気味な秘密結社、それがPalantirだった。

ぶっちゃけ何をやっているのか

じゃあ実際に何をやっているのか?身も蓋もないことを言ってしまえば、データ処理・機械学習を含む分析・可視化を一手に引き受ける自社製ソフトウェアフレームワークを持ったシステムインテグレータ(SI)である。プロダクトは2022年初頭時点ではFoundry・Gotham・Apolloの3つだ。

  • Foundry:データ取り込み→処理→分析をやるソフトウェア。一番の差別化はデータにバージョン化できることだろうか。最近だとGoogle SheetやExcelでも自動的にバックアップしてくれるが、それの大規模版だというイメージである。こちらのSpark Summitのプレゼンがわかりやすい。

  • Gotham:モノやヒトに関するデータを取り込んでその関連性を可視化し、因果関係を見つけだすソフトウェア。「どうやってテロリストを捕まえるか」や「どうやってマネロンを見つけるか」みたいに、関連性を浮き彫りにする系の事例はこちらを使っている。ホワイトペーパーを読むだけでは詳細はよく分からなかったが、機械学習のモデリングや、そのモデルを各種デバイスに配布することで、いわゆるEdgeでの意思決定もサポートできる模様。

  • Apollo:FoundryとGothamは創立当初からあるのに対し、こちらはここ数年出てきたもの。こちらの説明を読むと、独立した製品というよりは、FoundryとGothamを、顧客が望む環境で運用するためのフレームワーク。政府系・金融系といった制約ガチガチのお客さんが多い中、ソフトウェアの更新はどんどん続ける必要があるので、そのために作った社内フレームワークを製品として切り出した印象。なのでおそらくApolloだけを買う、という話ではなく、FoundryかGothamを買うとついてくるのだと思う。Apolloの最大の強みは「他の大手IT企業に先駆けて米国防衛省のIL-5 SaaS基準を満たしている」ことに集約される。つまり高い機密性を必要とするプロジェクトでは、機能の多寡はさておき、SaaSでやるならPalantir一択となってしまうわけだ。

https://s26.q4cdn.com/381064750/files/doc_financials/2020/q4/Q4-2020-Business-Update.pdf
https://s26.q4cdn.com/381064750/files/doc_financials/2020/q4/Q4-2020-Business-Update.pdf

じゃあこのFoundryとGothamをApolloで運用して、どういう顧客価値を提供しているのか。ウェブサイトのImpact Studies(かっこつけているが要は事例集)を読むと、「散らばっているデータを集めて何か新しい気づきを得る」という共通点はあれど、利用方法は多岐に渡っていることがわかる。これがPalantirといわゆる普通のSaaS企業の最大の違いだ。普通のSaaSは問題を絞り、そこに対して汎用的なソリューションを業界またぎで提供しようとするのだが、Palantirの場合は、業界をある程度しぼった上で、お客さんの問題はとりあえずなんでも解決しようとしてきたと言える。

売上:順調に伸びつつも、課題は非政府セグメント

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続きは、9059文字あります。
  • Go To Marketその1:政府系からの横展開
  • Go To Marketその2:課題が残るパートナー戦略
  • Go To Marketその3:戦略的投資案件()
  • 前編のまとめ

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