クリスマスAI商戦ダイジェスト
12月も後半に入り、AWS re:Inventに始まった年末のハイパースケーラーAI関連発表祭りも落ち着きつつある。クリスマス前にさらなるサプライズがある可能性も否めないが、このあたりで一旦今シーズンの発表を振り返ってみたい。
re:Inventの目玉は自社モデルNovaに関する発表だろう。日本人の耳的には駅前留学の印象が強すぎるネーミングだが、テキストに特化したMicro、マルチモーダルのLite、そしてその上位互換となるProの計三種類が発表され、気になるお値段もその能力に応じて設定されている。画像生成用途にNova Canvas、動画生成にはNova Reelと、一気に製品ポートフォリオを広げてきた。「複数のユースケースを想定したうえで、各ユースケースにピタッとはまるリソースを提供する」Novaの動きは、まさにAWSというプラットフォームの特性を表している(先日紹介したクラスメソッド社の方が早速試してブログ記事を書いている)。
https://dev.classmethod.jp/articles/amazon-nova-awsreinvent-try/
続いてAlphabet。Google DeepMindが発表したGemini 2.0には正直驚かされた。持ち前のサヴァン症候群的KYさと技術力を余すところなく発揮、10月に発表したばかりのGemini 1.5よりも高い精度を誇るだけではなく、速度も二倍速くなっており、ゴードン・ムーアもびっくりの進捗をみせた。Gemini 2.0の価格表はまだ公開されていないが、コスパでは堂々の第一位に躍り出ると推察されており、AIアプリ市場のコスト構造に大きな影響を与えそうだ。
https://artificialanalysis.ai/
価格競争でAmazonとGoogleがしのぎを削る一方で、OpenAIが公開したハイエンドモデルO1 Proは、iPhoneナントカPro並に強気な価格設定で、早くもヴェブレン財となりつつある。12 days of OpenAI最終日お披露目となったO3に関して言えば、そのコスパの悪さを考えると、商用化されたとしても決して安くはならない。裾野を一気に広げてきているAWSとGoogle。逆にひたすらハイエンドモデルの磨き込みに投資し続けるOpenAI。正反対にもみえる戦略を取る市場構造について考えてみたい。