Palantir v. Gartner
筆者がゴールデンウィークにのうのうとハイキングをしている間に多くのSaaS企業が業績報告を終えていた。今月はすでに紹介済み企業のカバレッジで終わってしまいそうだが、そうならないようにここから3週間しっかりと記事を書いていきたい。
AIP! AIP! AIP!
さっそく人工知能(AI)と大規模言語モデル(LLM)に全振りすることにしたPalantirの分析から始めることとする。Alex Karp社長直筆のLetter to Shareholdersからは荒い鼻息が聞こえてくる(ChatGPTで翻訳後微修正・強調は筆者)。
私たちの新しい人工知能プラットフォーム(AIP)に対する関心の高さと需要は前例のないものです。現在、この自然発生的でインバウンドの関心を市場内でのリーチの拡大に転換するために、私たちは会社全体と営業チームを動員しています。AIPは、商業および政府のセクター全体の企業が、自社で保有する大規模なデータセットに大規模な言語モデルの力を活用することを可能にします。プラットフォームの最初のバージョンは、今月中に一部の顧客に提供される予定です。私たちはすでに数百の商談を通じて、ソフトウェアの導入について潜在的な顧客と交渉を行っており、現在、プラットフォームのコンポーネントへのアクセスに対する条件と価格について交渉しています。
つい最近まで政府系業界に強みを持つデータ処理ツールの会社だったはずだが、いつの間にかAIP(Artificial Intelligence Platform)という製品名をぶち上げていて、思わず二度見してしまった。ウェブサイトを見る限り、顧客保有データをLLMモデルに食わせることで特定の領域に特化したChatGPTを構築しているようだ。Palantirは西側的世界秩序の番人を自負しているので、製品デモも軍事的利用シーンを想定したものが採用されている(下図参照)。
それっぽいデモではあるが、質問そのものは「チームオメガはジャベリンミサイルは何本持ってます?」なので、全くもってAIは必要なさそうである…
AIPそのものの製品としての完成度の話はさておき、LLMの目まぐるしい発展、特にオープンソース領域の日進月歩が、Palantirにとって追い風になっていることは間違いない。2月にも書いたように、IaaSやオープンソースの要素技術の上に薄い抽象化レイヤーを敷く「Palantirからしてみれば、最大の敵は内製」である。なので、LLMのような真新しくかつ経営陣の温度感が高い技術をいち早く製品ポートフォリオに取り込むことは、すでにPalantirに二桁億円の投資してしまった大企業経営陣や政府予算決裁者たちを安心させるためにも、必然の一手だと言える。顧客企業内でPalantirがいっちょ噛みできないところでLLM関連のPoCが走ってしまう前に、デモ映えする新プラットフォームを発表して牽制しようとするところに、一流のGTMの嗅覚を感じる。今思えば、昨夏発表されたForrester社のAI/ML Platforms WaveにLeaderとして登場した辺りから、Palantirは徐々にAIPへのピボットを始めていたのかもしれない。
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- ForresterではLeaderでもGartnerではVisionary
- LLM群雄割拠時代のPalantirの強み
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