Amplitude:デジタル時代のウェブ解析

MITとスタンフォードのオタクたちが立ち向かうAdobeとGoogleの寡占市場
らんぶる 2022.07.29
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SaaS企業をあえて世代分けするならば、クラウドでやることが画期的だった第一世代と、クラウドでやることが当たり前になった第二世代に分けられるだろう。先週まで扱っていたServiceNowや一大クラウドベンダーとなったSalesforceは典型的な前者だ。一方セキュリティSaaSの新鋭CrowdStrikeや業務管理プラットフォームを目指すAsanaは後者といって良い。

当ニュースレターは上場企業に主眼を置くため、どうしても第一世代の企業に焦点が当たりやすい。SaaS業界自体がまだまだ日が浅く、上場まで辿り着き安定した業績を残している企業となると創業からすでに15年から20年は経っている場合がほとんどであり、そうなるとSaaSやクラウドという言葉がまだなかった時代に創業している計算となる。「クラウド何それ美味しいの?」という冷笑を尻目にコツコツ売上を積み重ねてきた第一世代がようやく今デカコーンとして幅を利かせているというわけだ。

しかしSaaS業界の中でもとりわけクラウド移行が早かったのが(ウェブ)アナリティクスだ。Googleが2005年3月に買収したUrchin Softwareは同年11月にGoogle Analyticsとしてローンチされ、瞬く間に無償ウェブ解析ツールの標準となった(完全なる余談だが、UTM変数は元々Urchin Tracking Moduleの略である)。一方大企業向けのソリューションとしては、Josh JamesとJohn Pestanaが1996年に創業したOmnitureが10年の歳月をかけコツコツと市場シェアを伸ばした。2006年に上場、2009年にAdobeに$1.8B(≒2,460億円)で買収された後もAdobe AnalyticsとしてAdobe Experience Cloudの主力製品として活躍を続けている。

Google AnalyticsとAdobe Analyticsをアナリティクス分野の第一世代SaaSと位置づけるなら、Amplitudeは第二世代SaaSでもっとも成功した企業だろう。 MITの同級生だったSpenser SkatesとCurtis Liuは2012年にSonalightというモバイル向けの音声文字入力のアプリを開発、YCombinatorに鼻息荒く乗り込むが、Steve Jobsの言葉でいうところの「機能であって会社ではない」ことに気づき事業転換を図る。当時モバイルアプリのユーザー解析はまだ道半ばで、Google AnalyticsにしてもAdobe Analyticsにしてもまともに対応しておらず、SkatesとLiuも解析ツールを内製していた。この内製解析ツールをサービスとして切り出したのがAmplitudeの始まりである。2021年の9月にDirect Listingで晴れて上場、ここ半年強の下方修正の影響を一身に受けながらも評価額は$1.6Bで売上マルチプルも10前後と奮闘している。

今回はAmplitudeの歴史を紐解きながらウェブ解析という老舗SaaS分野の今後を占ってみたい。

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