OpenAIは新時代のGoogleか、AWSか、それともWindowsか

確信もないままにパターン認識的考察
らんぶる 2023.11.12
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OpenAIのDevDayが話題なので、オールドタイプのソフトウェアオタクの観点から分析してみたい。

ChatGPTの制作元であるOpenAIは、元はと言えばシリコンバレーのオールスターが作った研究組織だ。FinTechの風雲児Stripeで初代CTOを務めたGreg Brockmanや、深層学習の権威Hinton教授の弟子でGoogle Brainの研究者だったIlya Sutskeverなど、超一流の技術者たちが結集し、深層学習を中心としてAIの研究開発を始めたのが2015年のことだ。

2019年、当初YCombinatorの代表かつ取締役として関わっていたSam AltmanがCEOに就任すると、Microsoftとのインフラ協業を一気に推し進め、研究開発の規模も拡大する。理論から応用まで様々な研究結果とWebサービスを発表する中で、2022年11月にリリースした対話型AIサービスChatGPTが大ヒット、一気にお茶の間で認知される存在となった。8年越しのメジャーデビューである。

ウェブサービスとしてのChatGPTの革新性はふたつのスピード感で説明できる。

まずはユーザー獲得のスピード感。サービス提供開始から3ヶ月で1億人MAU突破のニュースが記憶に新しいが、ユーザー獲得の脅威的スピードは消費者分脈に限ったことではない。APIの公開から8ヶ月と経たないうちに、Fortune 500のうち460社が既にAPIを利用したアプリを開発しており、40社の羞恥的ラガードが揶揄されるフェーズまで来ている。一生涯のうち一度もFortune 500浸透率が5割に到達しない法人向けソフトウェア企業も少なくない中、一年足らずで9割を超えたことはひたすら驚異的である。ちなみに消費者分脈においても、今やWAUが1億人を突破しており、その勢いはしばらく止まりそうにない。

もうひとつのスピード感は、その開発速度だ。モデル性能の向上もさることながら、APIや周辺機能の開発スピードが凄まじい。3月あたまに公開されたAPIに乗っかりコソコソ商売をしようとしていた輩たちを、3月後半に発表したPluginsで叩き潰したことが記憶に新しいが、今回は外部API連携を可能にするActionsや、会話の文脈の永続化と制御フローを可能にするAssistants、外部教師データの追加が数分で終わるGPTs(複数形)を一気に公開、生成的AIに対するFUDのせいで財布の紐がゆるんだVCたちが、たいしてデューデリもせずに投資したであろう数々のスタートアップを一瞬にして焼き払った。Altman氏のキーノートをコピペネタ的に総括するならば、「実を言うとGPTのAPIに依存した薄っぺらいサービスはもうだめです。突然こんなことを言ってごめんね。2、3日前にGPTの開発者向けプラットフォームは完成しました。それが終わりの合図でした。程なく誰でも生成的AIを使ったサービスが作れるようになります。タームシートを出す時は気をつけて」といったところだろう。

イノベーションのひな壇芸人である投資サイドの人間は、起業家たちにバカにされることは百も承知で、安易なパターン認識が好きである。当ニュースレターの筆者とて例外ではない。OpenAIの激動の一年を傍観する中で、果たしてこれはGoogleの再来か、AWSの再来か、それともWindowsの再来か整理できずにいた。だが、今回のDevDayを見てようやっと答えが出た気がしており、それは「Googleであり、AWSであり、Windowsである」という安直かつ恐ろしい結論だ。以下3社との歴史的相似点について説明する。

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  • Googleとの共通点
  • AWSとの共通点
  • Windowsとの共通点

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