NRR低下からの明暗:Cloudflare v. Amplitude

枢要性と先行性、時々AI
らんぶる 2023.05.21
読者限定

何の面白味もなく再成長路線に乗ったServiceNowを眺めて、さて何を書こうかと困っていたのだが、ちょうど今週ユーザーカンファレンスKnowledge 23を開催しているので、その分析を今週後半に持ち越し、まずは明暗がわかれたCloudflareとAmplitudeについて解説することにする。

結論から言うと、Cloudflareの株価は急速なV字回復を見せる一方で、Amplitudeの方は株価回復を後押しする材料不足感が否めない。Amplitudeに至っては5月16日の場中には評価額が$1Bを割っており、ユニコーン脱落上場SaaSの烙印を押されかねないところまで売られている。

共通点:GTM組織の緩みとNRRの低下

AmplitudeのSkates氏もCloudflareのPrince氏も、業績報告で自身の意見を率直に述べる生粋の起業家タイプCEOなので、投資家としては恩の字である。各人の準備原稿から引用する(ChatGPTで翻訳後微修正・強調は筆者)。

まずはAmplitude。

全体的なビジネス環境はQ4と比較してQ1の方がはるかに厳しいものでした。テックや中小企業のセクターは特に大打撃を受け、Q1では2022年全体よりも多くのテック従業員が解雇され、その結果、顧客の行動はより慎重になっています。従量制の価格設定も、加速期間の後で私たちにとってはより厳しいリサイジングを意味します。(中略)企業がより無差別に予算を削減していることが明らかになりました。その結果、私たちは年間の見通しを更新します。現在、2023年度全体の収益成長率は12%から13%を予想しています。これは、以前に指導した19%から22%の成長率からダウンしています。これに対して、私たちは、現在の規模でのビジネスの運営方法について非常に慎重に考え、利益性とフリーキャッシュフローの加速に取り組んでいます。
https://www.fool.com/earnings/call-transcripts/2023/05/10/amplitude-ampl-q1-2023-earnings-call-transcript/

次にCloudflare。

マクロ経済環境は厳しさを増しており、私たちのチームの中には仕事に適切に対応していない人がいることが見受けられます。Marcと深く掘り下げたところ、私たちのセールスチームの中には、一貫して期待を下回っている100人以上の人々がいることを特定しました。(中略)この100人以上の人々が過去1年間で販売した新規受注額は年間総額の約4%でした。したがって、私たちはこのチームのアップグレードを行いつつも、大幅にセールス能力に影響を与えることなく行えると楽観的に考えています。チームのアップグレードは常に困難ですが、今は私たちにとってこれを行う絶好の時期です。1年前、テック労働市場は非常にタイトでした。しかし今日、Cloudflareで働きたいと熱望する才能あふれる人々が溢れています。Q1には、私たちは25万件以上の応募を受け付けました。そのうち約40%が営業ポジションへの応募でした。これは、2021年全体で受け付けた応募数を上回るものです
https://seekingalpha.com/article/4597557-cloudflare-inc-net-q1-2023-earnings-call-transcript

各社のIT予算見直しが一巡した今、数年前のように潜在的需要を見越してとりあえず買ってもらう脳死営業スタイルは機能しなくなっている。特にAmplitudeやCloudflareのように、デジタル事業の規模と正比例するタイプのSaaSは、予算引き締めの影響を真っ先に受けやすい。実際両社ともNet Revenue Retention(NRR)が低下している。

AmplitudeのNRR下降は特に著しい。準備原稿の中でアップセルの減速を主要因と挙げており、直近四半期売上$65Mという比較的小さい規模での急ブレーキは、赤信号である。NRRも売上予想も下方修正されてしまっては、アナリストとしても渋い評価を下すしかない。

Amplitudeほど深刻ではないが、Cloudflareも昨年まで必達目標としていたNRR130%は遠ざかっている。1年前Cloudlflareについて詳説した際に「2020年Q3くらいまでは正直CloudflareのNRRは可もなく不可もなくという数字であった。しかし2020年Q3を境に上向くようになり、今や127%と業界ベンチマークの120%を超えるところまできている。この一番の要因は間違いなく製品ポートフォリオの拡充である」と書いた。この分析はどうやら少し楽観的すぎたようだ。ゼロトラスト領域がレッドオーシャン化する一方で、R2やD1といったエッジコンピューティング領域での利用拡大が遅れたようにみえる。ポンコツ営業100人をレイオフしたとのことだが、裏を返せばポンコツでも売れる市況でも製品ラインアップでもなくなったとも言える。

この記事は無料で続きを読めます

続きは、2050文字あります。
  • 相違点:最重要トレンドとの距離とスピード感

すでに登録された方はこちら