Bill.com:超気長な二兆円企業①
事後報告となってしまい申し訳ないが、先週火曜まで一週間強お休みをいただいていた。当初は旅先から投稿するつもりであったが、結果的にまるまる二週間配信が滞ってしまった。9月には配信数をアップし挽回する予定だ。
コッカラSaaSは実証主義である。はじめに理論ありきではなく、実際上場企業として活躍しているSaaS企業を分析し、そこに普遍性を見出そうという帰納的スタンスだ。とは言え筆者も元はと言えば業界の人間なので、バイアスが全くないわけではない。その最たるバイアスが「どんなSaaS企業もいつかはエンタープライズ企業(エンプラ)と向き合う」である。もちろん商売の入り口としてSMBから入るというのはよくある戦略である。ただどんな企業も最後はエンプラと商売をしないと市場が求める成長率を維持できないというのが持論だ。SMB専門でも上場はできるかもしれない。しかし上場企業として独り立ちするのは難しい。
そんな筆者にとってBill.comは反証的存在だ。2006年にシリコンバレーで創業した請求と支払いの管理SaaSは、創業後一貫してSMBに注力しており、2019年上場後もそのスタンスを変えていない。一方評価額はウナギ登りであり、未だにTTMベースで$600MのARRに対して売上マルチプル30倍というモンスター企業だ(しかも後で触れるが2021年に経費精算SaaSのDivvyと請求書管理のinvoice2goを立て続けに買収してトップラインを補強してのこの数字であり、2020年時点では売上マルチプル120だったりする)。
自分のテーゼに反する実例こそ分析するべきと知りつつも、fintechに関してド素人であることもあり二の足を踏んでいた。しかし今回読者の方に背中を押されるかたちで今回取り上げることとなった。現在進行形でいろいろと学びがあるので、この場を借りてその方に感謝したい。
それでは本題に入っていくことにしよう。Bill.comを語る上で欠かせないのが、創業社長René Lacerteと彼の出自である。