Cloudflare:インターネットの運び屋①
今週から少なくとも3週間にわたりCloudflareについて分析していく。初の有料読者のみコンテンツということで少し緊張しているが、今週も無邪気にコッカラSaaSの精神で分析していきたい。
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Cloudflareという名前に馴染みがない人でも一度はそのサービスの恩恵を受けたことがあるはずだ。最も有名な製品であるCDN(Content Delivery Network)は世界中のウェブサイトの20%近くで使われていると言われておりShopifyやZoomそして早稲田大学など15万社以上を顧客に持つ。
ハーバードビジネススクールの同期だったMatthew PrinceとMichelle Zatlynが「これからもっとウェブサイトが増えるのに安価にウェブサイトの高速化と堅牢化ってまだないよね」といういかにもHBS的(というかクリステンセン的?)な気づきを得たことがきっかけでCloudflareはスタートした。Princeの旧友Lee Hollowayが創業エンジニアとして加わりTechCrunch Disruptで2010年にローンチ。当時の動画は今も残っている。
ウェブサイトを高速化するにはいくつか方法があるが、もっとも直接的な方法はダウンロード先を訪問者に物理的ないし論理的に近づけることだ。これがまさにContent Delivery Networkの考え方だ。ウェブサイトのコンテンツを色々なところにばら撒いておいて、近いところから持ってくれば、毎回わざわざ本丸のサーバーに問い合わせなくて済む。本丸のサーバーへの問い合わせ回数も減らせるのでウェブサイトも落ちにくくなる上に、怪しい問い合わせはそもそもブロックできるのでセキュリティ改善にもつながる。自社のウェブサイトをひとまずCDNのドメインに向けることで、そちらの方でよしなにトラフィックを捌いてもらうというわけだ。言わばウェブサイトの防波堤である。
CDNをアルゴリズム的な観点で考えると二つの課題が浮かび上がる。①どこに防波堤(エッジサーバーという)を置き②どのエッジサーバーにウェブリクエストを飛ばすかだ。これはネットワークアルゴリズムという理論CSの分野の応用で、MITのTom Leighton教授とその一派によって90年代に盛んに研究されていた。その集大成とも言えるのが元祖CDNであるAkamai Technologiesであり今もLeighton教授がCEOを務めている。
MITの天才学者の理論に裏付けされたAkamaiの技術は素晴らしかったのだが、そもそもAkamaiが創業された1998年とCloudflareが創業された2010年ではインターネットを取り巻く環境は大きく違っている。このことが一眼でわかるのが下記のグラフだ。
https://static1.squarespace.com/static/50363cf324ac8e905e7df861/t/5e45ca2b5750af6b4e5fcb14/1581632374050/2018+Benedict+Evans+End+of+the+beginning.pdf
元a16zのBen Evansが2018年に発表したプレゼンからの抜粋となるが、いかに1998年時点でのインターネットが小さかったかわかる。と同時にCloudflareがローンチした2010年はスマホ革命の幕開けの年とも言えよう。そういう意味でもCloudflareの誕生は運命的だったのかもしれない。