君が手にするはずだった100万ドルについて
数学に興味のある読者はすでにご存知のことだろうが、現代数学の難問のひとつであるナヴィエ・ストークス方程式の有限時間内の爆発解が見つかった。数学に興味のない人からすれば何の話だかわからないと思うので、 「ランドン・クレイという金持ちが1998年に作った基礎科学の研究所が、2000年に7つの未解決問題に対して、解決した人にそれぞれ100万ドルの懸賞金を出すと発表、2006年にそのうちの一つ『ポアンカレ予想』が肯定的に解決されるも、その他の6つは以後20年に渡り未解決だった。しかしここに来て社内でAstra超級AIをぶん回せるOpenAIが88時間かけて残り6つの問題のひとつを解決した」とでも言った方が伝わるかもしれない。
未解決問題が解決されたこと自体はすばらしいのだが、これには裏話がある。
NYUクーラント研究所の数学者Tristan Buckmasterと、Anthropic社のLevent Alpögeは、ここ数ヶ月AIを駆使しながら協力して、ナヴィエ・ストークス方程式に関係とも関係が深いとある未解決問題に取り組んでいた。Alpögeは面白い経歴の持ち主で、Princeton大学で数学の博士号取得した後、Harvard大学の権威あるポスドクJunior Fellowを経て、有限ベクトル空間シコシコビジネス通称LLMに転じている。
彼らが取り組んでいた問題は「滑らかな圧力勾配のある3次元オイラー方程式の有限時間爆発解」というものだが、数学的詳細はどうでもよい。野次馬的に重要なのは、彼らがナヴィエ・ストークス方程式を「解決」しそうだと聞きつけたOpenAIが、即座に社内モデルを援用してその解決にトークンを燃やし始めたこと、そしてたったの88時間で解けてしまったこと、そして解けた後にAlpögeとBuckmasterにコンタクトし、「お前たちもがんばったんだからClayの懸賞金はあげるよ、でも論文を書くならOpenAIとの共著にしてね」と提案したこと、さらにAlpögeはAnthropicの社員であるため共著者に含めることはできないと非モテムーブをかましたことでBuckmasterがブチ切れてしまい、事の顛末を俺達のインターネットに晒してしまったことだ。その結果OpenAIは「ファッショソでGPUをぶん回して数学の未解決問題を解き散らし、その分野で地道に研究してきた数学者に、パパ活上等のコンプレックスまる出し資本主義的交換条件を突きつけるキモおじムーブをかます」会社だと非難されることとなった。
初期データ汚染というTaoの憂慮
そしてここからが興味深いのだが、ナヴィエ・ストークス方程式の解決が引き金となり、数学者の間で「数学におけるAIの使い方を見直そう」運動が始まる。数学界のモーツァルトことTerence Taoが中心となり、「数学におけるAIの重大なミスアライメント」という声明を発表、AIによって数学者すら理解できない速度で証明が量産されていく事態に警鐘を鳴らした。声明の署名者が全員フィールズ賞受賞者であったこと、数学がサイエンスを支えてきたんだお的な権威主義的コメントが混じっていたこともあり、位相空間はおろか線形代数の基底変換でつまずいた職業エンジニアたちのルサンチマンを触発、X上では「数学者もAIに代替されて乙」といった主旨の発言が数多くみられた。